自宅最寄の駅に着いた。
暑すぎる電車内からホームに降りると、冷たい夜風に頬を撫でられて、実に気持ちが良い。
その時、後から誰かが僕の腕を掴んだ。
「おじさん、私のスカートのぞいたでしょう!」
振り返ると、さっき僕の正面の座席でパンティ丸出しで居眠りしていた女子高生が睨みつけている。
「はあ?そんなことするわけないじゃん」
女子高生はチビでポッチャリしていて、全然好みのタイプじゃない。
「君が勝手に股を広げて居眠りしてたんだろう」
「のぞきは犯罪だよ!」
あんまり可愛くないのに気だけは強い。まさに僕の嫌いなタイプだ。
ナップザックを抱えた冴えない男と女子高生がもめている。
明らかに僕にとって不利な状況だ。
乗客が何人かこちらの様子をうかがっている。
僕が焦りだすと、女子高生は、小声で「お金くれたら許してあげる」と囁いた。
「えっ!?」
何が何だかわからず、戸惑って、固まってしまった。
何かあったんですか?と、女性が声を掛けてきた。
25歳位、セミロングの黒髪、パンツスーツ姿の女性。背が高く、綺麗な顔立ちをしている。
女子高生は一瞬、しまった、という顔をした。
女性は「XX署の者です」と身分証明書を提示し、女子高生に「どうしたの?」と優しく聞いた。
「・・・私のスカートの中を・・・この人が・・・何でもないです」
「怖がらなくてもいいのよ。落ち着いて私に話して」
俯いていた女子高生は、突然走り出そうとして僕にぶつかった。
その時、背負わずに抱えていた僕のナップザックが地面に落ちた。
僕は大切なビデオカメラが心配で急いで拾い上げた。
ナップザックに開いた穴に、ホームの電灯が反射し、キラリと光った。
女性警察官が、「あなた、ナップザックの中にカメラを仕込んでいますね」と詰問調で言う。
「えっ!?はあ!?」
僕は、ただうろたえるしかなかった・・・・・・
僕は、XX署の取調室で、さっきの女性警察官と向き合って座っている。
「私は性犯罪者を絶対に許せない。やったことは素直に認めて、罪を償うべきよ」
僕は、ただ目を丸くして黙り込んでいた。
しかし、そのナップザックの中のカメラを出しなさい、という声に我に返って、顔を真っ赤にして反論した。
「こ、これは、僕のプライバシーです!!そもそも僕は何にもやってないんですよ!!何の権利があってそんなことを!」
その様子を見て、彼女はかえって確信を深めたようだ。微笑みさえ浮かべて「それに映っているものを見せてくれれば、疑いが晴れるでしょう?」などと言う。「さあ、お出しなさい」
僕は、カメラに映っている映像を女性に見られる恥ずかしさでトマトのようになって、渋々ビデオカメラを取り出した。
「操作、分かりますか・・・?」とボタンに触れようとしたら、彼女は「触らないで!」と制して僕からカメラを取り上げた。
彼女は、ビデオカメラを操作し、モニターで再生して見始めた。
びっくりしたように顔を上げ、僕の顔を直視し、またモニターに目を戻す。
映像の中で僕は、格闘技を極めた美しい裸の女の子に殴られ、蹴られ、投げられ、絞められ、唾を吐きかけられ、暴言を浴びせかけられ、足の指を舐めさせられ、小便を飲まされ、性器を顔に押し付けられて失神させられ、最後はウンコを食べさせられるのだ。
ノックの音がして、若い男の刑事が部屋に入ってきて、彼女に耳打ちしている。
彼女はモニターを見ながら聞いていたが、驚いたような素振りを見せた。
男の刑事が部屋を出て行った。
彼女は無言でモニターを見続けている。
映像が終わったようだ。
彼女は、カメラをあれこれ操作してから、丁寧に机の上に置いた。
「女子高生のパンティは映っていましたか・・・・?」
僕は恨みがましい目で相手を睨みつけながら呻くように言った。
「お、面白い映像ですね。どうやって撮ったんですか?」
「カメラマンとしてもう一人デリヘル嬢を呼んで・・・、そんなことどうでもいいでしょう!」
「実は・・・大変申しあげ難いのですが・・・さっきの女の子は、痴漢やのぞきをでっち上げて男性からお金を脅し取る常習者でした・・・大変申し訳ありません」
彼女は机に両手を付いて、深々と頭を下げた。
「ふざけるな!!」僕は机を叩いて叫んだ。「訴えてやるツ!!」
頭を下げたままの相手は体をビクッと震わせた。
「あなたは、僕がダサいから、キモいから、最初から僕を犯人だと決め付けてたんだ!!差別じゃないか!!人権侵害だ!!」
怒りから、突然悲しみへと感情が変化した。
「僕は、ダサいです。気持ち悪いです。チビです。デブです。ハゲです。全くモテません。変態です。でも、犯罪を犯したことなんて生まれてから一度も無いです。人を見た目で判断して、無実の人間を犯人扱いするのは、犯罪じゃないんですか!」
涙が次から次へと溢れ出して来る。
彼女は下を向いたままだ。
・・・・・・長い時間が流れた。
先に口を開いたのは彼女だ。「どうしたら許して頂けますか?」
「もういいです。あなたは自分の間違いを認めて謝罪してくれた。それでいいです」
僕は大事なカメラをナップザックにしまい、席を立った。
「ご自宅までお送りさせて下さい」
暑すぎる電車内からホームに降りると、冷たい夜風に頬を撫でられて、実に気持ちが良い。
その時、後から誰かが僕の腕を掴んだ。
「おじさん、私のスカートのぞいたでしょう!」
振り返ると、さっき僕の正面の座席でパンティ丸出しで居眠りしていた女子高生が睨みつけている。
「はあ?そんなことするわけないじゃん」
女子高生はチビでポッチャリしていて、全然好みのタイプじゃない。
「君が勝手に股を広げて居眠りしてたんだろう」
「のぞきは犯罪だよ!」
あんまり可愛くないのに気だけは強い。まさに僕の嫌いなタイプだ。
ナップザックを抱えた冴えない男と女子高生がもめている。
明らかに僕にとって不利な状況だ。
乗客が何人かこちらの様子をうかがっている。
僕が焦りだすと、女子高生は、小声で「お金くれたら許してあげる」と囁いた。
「えっ!?」
何が何だかわからず、戸惑って、固まってしまった。
何かあったんですか?と、女性が声を掛けてきた。
25歳位、セミロングの黒髪、パンツスーツ姿の女性。背が高く、綺麗な顔立ちをしている。
女子高生は一瞬、しまった、という顔をした。
女性は「XX署の者です」と身分証明書を提示し、女子高生に「どうしたの?」と優しく聞いた。
「・・・私のスカートの中を・・・この人が・・・何でもないです」
「怖がらなくてもいいのよ。落ち着いて私に話して」
俯いていた女子高生は、突然走り出そうとして僕にぶつかった。
その時、背負わずに抱えていた僕のナップザックが地面に落ちた。
僕は大切なビデオカメラが心配で急いで拾い上げた。
ナップザックに開いた穴に、ホームの電灯が反射し、キラリと光った。
女性警察官が、「あなた、ナップザックの中にカメラを仕込んでいますね」と詰問調で言う。
「えっ!?はあ!?」
僕は、ただうろたえるしかなかった・・・・・・
僕は、XX署の取調室で、さっきの女性警察官と向き合って座っている。
「私は性犯罪者を絶対に許せない。やったことは素直に認めて、罪を償うべきよ」
僕は、ただ目を丸くして黙り込んでいた。
しかし、そのナップザックの中のカメラを出しなさい、という声に我に返って、顔を真っ赤にして反論した。
「こ、これは、僕のプライバシーです!!そもそも僕は何にもやってないんですよ!!何の権利があってそんなことを!」
その様子を見て、彼女はかえって確信を深めたようだ。微笑みさえ浮かべて「それに映っているものを見せてくれれば、疑いが晴れるでしょう?」などと言う。「さあ、お出しなさい」
僕は、カメラに映っている映像を女性に見られる恥ずかしさでトマトのようになって、渋々ビデオカメラを取り出した。
「操作、分かりますか・・・?」とボタンに触れようとしたら、彼女は「触らないで!」と制して僕からカメラを取り上げた。
彼女は、ビデオカメラを操作し、モニターで再生して見始めた。
びっくりしたように顔を上げ、僕の顔を直視し、またモニターに目を戻す。
映像の中で僕は、格闘技を極めた美しい裸の女の子に殴られ、蹴られ、投げられ、絞められ、唾を吐きかけられ、暴言を浴びせかけられ、足の指を舐めさせられ、小便を飲まされ、性器を顔に押し付けられて失神させられ、最後はウンコを食べさせられるのだ。
ノックの音がして、若い男の刑事が部屋に入ってきて、彼女に耳打ちしている。
彼女はモニターを見ながら聞いていたが、驚いたような素振りを見せた。
男の刑事が部屋を出て行った。
彼女は無言でモニターを見続けている。
映像が終わったようだ。
彼女は、カメラをあれこれ操作してから、丁寧に机の上に置いた。
「女子高生のパンティは映っていましたか・・・・?」
僕は恨みがましい目で相手を睨みつけながら呻くように言った。
「お、面白い映像ですね。どうやって撮ったんですか?」
「カメラマンとしてもう一人デリヘル嬢を呼んで・・・、そんなことどうでもいいでしょう!」
「実は・・・大変申しあげ難いのですが・・・さっきの女の子は、痴漢やのぞきをでっち上げて男性からお金を脅し取る常習者でした・・・大変申し訳ありません」
彼女は机に両手を付いて、深々と頭を下げた。
「ふざけるな!!」僕は机を叩いて叫んだ。「訴えてやるツ!!」
頭を下げたままの相手は体をビクッと震わせた。
「あなたは、僕がダサいから、キモいから、最初から僕を犯人だと決め付けてたんだ!!差別じゃないか!!人権侵害だ!!」
怒りから、突然悲しみへと感情が変化した。
「僕は、ダサいです。気持ち悪いです。チビです。デブです。ハゲです。全くモテません。変態です。でも、犯罪を犯したことなんて生まれてから一度も無いです。人を見た目で判断して、無実の人間を犯人扱いするのは、犯罪じゃないんですか!」
涙が次から次へと溢れ出して来る。
彼女は下を向いたままだ。
・・・・・・長い時間が流れた。
先に口を開いたのは彼女だ。「どうしたら許して頂けますか?」
「もういいです。あなたは自分の間違いを認めて謝罪してくれた。それでいいです」
僕は大事なカメラをナップザックにしまい、席を立った。
「ご自宅までお送りさせて下さい」
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